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■護衛艦「ひゅうが」型■ |
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日本の新型ヘリコプター搭載護衛艦で、実質的な戦後初のヘリ「空母」。現在各護衛隊群DDHグループの旗艦となっているヘリコプター搭載護衛艦DDHの内、「はるな」型の「はるな」は昭和48年、「ひえい」は49年に竣工しFRAM(近代化改装・艦齢延長工事)も行われたが、「はるな」は平成20年度に艦齢36年で除籍され、「ひえい」も平成22年度に除籍される見込みである。その為後継艦として本級の建造が平成13年度からの中期防衛力整備計画に盛り込まれ、16年度計画および17年度計画で2隻が建造されることになった。 その後2番艦は18年度計画に盛り込まれたため、それぞれ進水式で命名されるまで計画年度から通称16DDH、18DDHと呼ばれ、本級は13,500トン型と呼ばれていた。しかし日本の戦後初めてとなる、このヘリ「空母」建造までの道のりは極めて長いものだった。 戦後「空母」の再保有が最初に検討されたのは昭和27年、海上警備隊の発足した時だった。この空母保有の動きの元となったのはハンター・キラー(対潜掃討)構想である。当時の海上警備隊や海自では将来原潜が潜水艦の主力となった時、低速の水上戦闘艦では対処不可能であるため、対潜ヘリコプターで探知攻撃しようと考え、その為にヘリ空母などを保有しようとしたのである。そして28年3月頃には実際に対潜空母や護衛空母を米海軍から貸与してもらうように米軍にも通達され了承が得られたが、結局これは30年4月に断念される。そして2次防前の32〜33年ごろ再度空母の保有を検討、対潜空母やヘリ空母、商船改造ヘリ空母などが提案され、この内のヘリ18機を搭載するヘリ空母の建造が35年7月に庁議で決まったものの、当時は日米安保問題による政局混乱などがありまたも実現しなかった。3次防においてもヘリ空母の建造要求が出てきたものの、この頃になるとヘリコプター着艦拘束装置やフィン・スタビライザーなども登場し、小型の水上戦闘艦でもヘリの安全運用が可能となった。これが現在の「はるな」型 と「しらね」型の誕生を可能とし、結局このDDH4隻が整ったことにより空母保有の大きな動きは当分無くなる事となる。 再び空母保有の動きが出たのは冷戦末期のシーレーン防衛における洋上防空であった。 当時はシーレーン1,000浬防衛構想においてソ連のバックファイヤー爆撃機などの脅威が叫ばれていた。折りしも82年のフォークランド紛争では軽空母が活躍しており、83年ごろ日本でも洋上防空のためにDDVと呼ばれた20,000トンぐらいの軽空母を建造し、それにハリアー戦闘機や対潜ヘリを搭載しようという案が出て、防衛力整備計画に盛り込むところまでいった。しかし財政的、政治的事情や、ハリアーの性能が低いこと 本格的なAEW機が搭載できないこと等防空能力が低く、また海自も空母よりもイージス艦を優先し、またしても実現には至らなかった。こうして再び「空母」保有の動きは断たれる。90年代に入ると「はるな」型後継艦が意識され始め、この後継艦を 「空母」にするための布石だったのか、「おおすみ」型輸送艦が ドック型揚陸艦としての合理性に反し空母艦型を採用している。そして平成12年12月15日日本級の建造を盛り込んだ中期防衛力整備計画が決定、ついに戦後初のヘリ空母が実現することとなった。 「ひゅうが」型の開発設計においては「はるな」型を上回る高い航空機運用能力と、護衛隊群旗艦としての指揮管制能力だけではなく、冷戦後の新しい任務に対応するための能力が求められた。航空機運用能力については、既存のDDHは他の護衛艦に比べ秀でているものの同時発着数やヘリ整備能力面で完全ではなく、「ひゅうが」型では必要に応じ1個護衛隊群のヘリコプター8機を運用可能、全天候整備を可能とする広い格納庫、 4機の同時運用が可能であることが求められた。指揮管制能力については、護衛隊群旗艦として海上自衛隊の海上作戦部隊全般にかかわるC4ISRシステムであるMOFシステムの洋上端末であるC2Tの搭載だけでなく、冷戦後の新しい任務である災害派遣、邦人救出、平和維持活動などにおける司令部的な機能を果たすための能力も求められている。 これらの要求性能を実現するために3つ艦型が検討されることとなった。1つ目は従来のDDHを発展させたもので、艦の前半分に艦砲とVLSおよび艦橋構造物があり、艦後半分が飛行甲板で、その下が格納庫となっている。2つ目は艦の前後が飛行甲板で甲板下には格納庫があり、艦中央に艦橋構造物があるというもので、艦橋構造物右舷側に煙突とマスト、左舷側に格納庫があり、最上部に両舷に跨る艦橋 、そして格納庫の前後はシャッターになっていて前後の飛行甲板に通じていると言う、極めて常識はずれな艦型であった。3つ目の案がいよいよ全通甲板の空母艦型である。中期防衛力整備計画決定時はまだ艦型が決定しておらず、この3案の中から2つ目の案 がイメージ図 として発表されたが、これがかなり議論を呼ぶこととなる。しかし3つ目の案が最も航空機運用能力が優れており、この艦型が採用されることは明白であったため、後からしてみればこの2つ目の案の発表は世論の動向を探るためか、空母との批判を避けるためとも言われる。
その後も専門家の論評やマニアの議論をよそに、艦型の選定や開発設計が行われ、15年8月末に平成16年度概算要求と共に「ひゅうが」型の新しいイメージ図と詳細が公表された。艦型はヘリの同時発着艦数、着艦時における安全性などから空母艦型に決定した。この時発表された「しらね」型からの基準排水量の増加理由は、 空母艦型の採用により「ひゅうが」型は一般的な軽空母の外見へと変化し、上甲板は全長195m最大幅33mの全通甲板で、その全通甲板の右舷中部には70m×9mのアイランド型の艦橋、艦の前後には2基の航空機用エレベーターと弾薬・物資用小型エレベーター、甲板周りにはキャットウォークがある。 左舷側に張出した飛行甲板には発着艦スポットが4箇所あり、3機のヘリを同時に発着艦させることが可能であり、発着艦スポット以外の甲板でも強度的に発着艦可能である。エレベーターは艦橋横に20×10m、アイランド後方中央に20×13mのエレベーターがあり、 揚降能力はともに30トン以上なためMH-53Eを運用可能で、特に後部エレベーターはSH-60Kのローターを折り畳まずに昇降することができる。 飛行甲板の下は一般的な空母と同様、第2甲板がギャラリー・デッキとなっており、その下の格納庫は第3、第4甲板の2層分の高さが確保され、全長は前部と後部エレベータの間のみで約60mになる。その格納庫は防火シャッターで前後に区切れるようになっており、前部が第1、後部が第2格納庫となる。 さらに後部エレベーターの後方は 第2、3、4甲板の3層分を使った各種ヘリの整備スペースがありスペースは20m×20mで、 ここではローターの展張整備も可能で天井にはエンジン交換用のクレーンなどがある。これら前部エレベータから後部整備スペースを含めた全長は約120mとなっている。 飛行甲板の海面からの高さは15mで、主船体は第1甲板である飛行甲板含め7層の甲板で構成されており、アイランドは5層で構成されている。艦内から航空機用の弾薬や物資を搬送する小型エレベーターは4m×2mで揚降能力は1.5トン。搭載機の関連機材としてヘリ用牽引車、牽引機、救難作業車(消防車)、自走式クレーン、高所作業車、フォークリフトなども新規に導入される。ちなみに アスロックは予備弾も搭載されいるという説もあり、その場合自走式クレーンがアスロック予備弾の装填にも使用されるとも言われる。 搭載機ついては当初護衛隊群が八八艦隊編成のため、通常は哨戒ヘリコプターSH-60K3機と掃海・輸送ヘリコプターMCH-101が1機、必要に応じて各種ヘリコプターが搭載可能としていたが、平成16年12月に策定された新防衛計画の大綱により、八八艦隊編成と、哨戒ヘリの艦載・陸上の区分が廃止されたので、柔軟なヘリの運用が可能となったことにより、本艦も4機以上のヘリが搭載されるものと思われる。ちなみに本艦は最大で10機ほどまで搭載できるという。VTOL機については防衛庁では軽空母と非難されるのを避けるためか、飛行甲板は耐熱構造でなくスキージャンプ台も無いため運用不可と説明しており、導入計画も無い としている。しかし飛行甲板はMH-53Eの重量に耐える構造になっており耐熱塗装も施すことも可能で、軽空母に改造することも可能だとする声もあるが、実際にVTOL機運用が可能かどうかの真偽は不明である。また将来的には広域哨戒、早期警戒、攻撃評価 に活用きるヘリUAVの導入と搭載も検討されているとも言われる。 兵装は「はるな」型では5インチ砲を搭載していたが、「ひゅうが」型では艦載砲は無く短SAM、アスロック、短魚雷発射管とCIWSと機銃が搭載される。短SAMは米国製の発展型シー・スパローESSMが装備される。アスロックは 当初国産の新アスロックの予定だったが、開発遅延により当分は従来型のMk46魚雷弾頭のアスロックとなり、新アスロックは将来搭載される。これら短SAMとアスロックの発射機であるMk41VLSは艦尾右舷に搭載され、 16セルの内、4セルに短SAM16発が、12セルにアスロックが装填される。さらにアスロックについては前述のとおり艦内に4セル分の予備弾が搭載されるとも言われる。3連装短魚雷発射管は97式魚雷も発射できる新型のHOS-303が 第4甲板左右舷に搭載されており、扉を開いて発射する。またこの3連装短魚雷発射管は将来的に対魚雷魚雷の装備も考えられるとも言われる。CIWSは新型のファランクスブロック1Bが搭載され、位置は当初アイランドの前後だったが、後に艦首右舷と艦尾左舷に変更された。小型舟艇攻撃用としては各種機銃が装備できるマウントが 艦首1基、左舷4基、右舷2基の計7基搭載される。 チャフ発射機は当初は両舷の張り出し部に、新型国産の旋回俯仰式が搭載されるという説もあったが、結局Mk36SRBOCが計6基搭載されている。対魚雷装備について は対魚雷デコイとして曳航具4型が第5甲板後部に装備されており左舷艦尾に繰出し口がある。 センサー類としてはレーダー、ソナーとも今まで鋭意開発されてきた新型が装備される一方、従来の護衛艦では搭載されていたレーダーの一部には搭載されないものも見られる。その例が対空レーダーで、代わりにその機能を担う多機能レーダーのFCS-3(短SAMシステム3型)が搭載される。FCS-3は極めて高い捜索探知能力と多目標追尾能力を誇るアクティブ・フェーズド・アレイ・レーダーで、4面あるアンテナにはイルミネーターも付随しておりESSMの射撃指揮も行う。このFCS-3については当初はアイランドに塔状構造物を設け、そこに取り付けられる予定だったが、アイランドが縦長く視界確保が難しいため、結局艦橋上に前面と左面、航空管制室上に後面と右面が装着されている。対水上レーダーも従来的なものは装備されず、OPS-20航海レーダーの発展型であるOPS-20Cが対水上レーダーとして装備される。このレーダーは従来の対水上レーダーに比較して探知距離が短いものの、ESMなどで発見が難しい性能を持っている。艦首バウ・ソナーも新型の長大なソナー・ドームが装備され、 このソナー・ドームはドームの前部が円筒形のアレイで側面がフランク・アレイとなっている。低周波を使用することにより探知距離よりが長く、浅海域での能力にも優れていると言う。 一方で多くの護衛艦に装備されている曳航ソナーについては装備されないこととなった。 これらセンサーやデータリンクからの情報を処理し各種兵器を管制するのが、新開発の水上艦用新戦術情報処理システムATECS (Advanced Technology CombatSystem)である。 これは戦闘指揮装置であるOYQ-10ACDS(Advanced Combat Direction System)、 OQQ-21水上艦用ソナー・システム、電子戦装置(NOLQ-3C)やデータリンクなどをネットワーク化したものであり、OYQ-10が各種レーダーやデータリンクからの情報を基にFCS-3を管制するだけでなく、 OQQ-21や電子戦装置も指揮し各種戦闘を調整する役割を担っている。 OQQ-21は艦首バウ・ソナーやヘリコプターによるソノブイを含めた信号処理装置、対潜情報処理装置ASWCS(Anti Submarine Warfare System)から構成されており、アスロックや短魚雷などを管制 する。このATECSのソフトウェアは独自に開発されたものだが、コンピューターやディスプレイ・コンソールについてはCOTS(民需品)を多用したUYQ-70シリーズが採用されている。 本級は護衛艦隊旗艦としての司令部機能も充実しており、艦内には従来どおりの個艦CICのほか司令部用CICである司令部作戦室FICも設置される。さらに指揮管制機能を強化するため、現在整備が進められている海上作戦部隊全般に関わるC4ISR(指揮、統制、通信、コンピューター、情報、監視、偵察)システムであるMOF(MaritimeOperationForce)システムの洋上端末C2T(Command and Control Terminal)を装備する とされていたが、実際にはMOFシステムの新しい洋上端末である洋上ターミナル(MTA)が装備されている。また指揮・管制能力充実のため衛星通信アンテナも多数搭載されており、 マスト下段の右舷フラットに広帯域衛星通信装置(NORA-1C)、アイランド前後の01甲板上に広帯域衛星通信装置(NORA-7)、後部煙突左側のフラットにKuバンドの衛星通信装置(NORQ-1)、飛行甲板前部右舷のフラットと後部01甲板にUSC-42が、飛行甲板後部右舷フラットにインマルサット衛星通信装置(NORC-4B)が装備されている他、艦の右舷側各所には多数のホイップ・アンテナが装備されている。さらにDDHグループ旗艦としてだけでなく 、陸海空の統合作戦時には統合部隊司令部として、大規模災害時には洋上対策本部としての機能を担えるようにするため、第2甲板には多目的室も設けられている。この多目的室は必要に応じて室内を細かく区切ることもでき、床面には電源やネットワークハブを備えたOAフロアとなる。 推進システムについては従来どおりのCOGAGが採用されており、ガスタービン4基で2軸推進となる。ガスタービンの機種については 一時はWR21も提案されたが結局LM2500が採用された。 機械室の配置は抗堪性に配慮したいわゆるシフト配置で、左舷軸の第1機械室と右舷軸の第2機械室の間に補機室を設けている。馬力は100,000馬力と排水量が半分近くの「こんごう」型と同程度だが、速力は同じ30ノットとなっているほか、航続距離は従来の護衛艦と同程度の20ノットで6,000浬とする資料がある。 主発電機は2,400キロワットのものが4基でガスタービンが使用されている。また護衛艦としては「いせ」が初めて他艦に対する洋上補給装置を備え 、「ひゅうが」も後日装備されるといわれる。これらを制御する操縦室兼応急指揮所は格納庫下の第5甲板中部にあり、主機操縦盤、補機制御監視盤、電源監視制御盤、応急監視制御盤が配置されている。 こうして長い道のりを経てようやく誕生することになった戦後初の「空母」であるが、今までの空母保有の動きが起きた時とは政治情勢が大きく変わっていたため、大した政治的論議も経る事も無く予定通り 「ひゅうが」が平成16年度計画で予算が計上され、無事承認された。 2番艦「いせ」については17年度計画で建造される予定だったが、防衛計画の大綱の見直しなどでミサイル防衛が優先されるほか、衛星通信ネットワーク等の情報通信事業等を最重視することにより17年度は護衛艦は調達されないこととなり、18年度計画で予算が計上され承認された。それと同時にインドネシア国際緊急援助活動での教訓を踏まえ 「ひゅうが」型は洋上補給装置の追加、飛行甲板の形状などの設計変更が行われている。竣工は「ひゅうが」が平成20年度、 「いせ」は平成22年度で「ひゅうが」は第1護衛隊群第1護衛隊に配備されおており、「いせ」は第4護衛隊群第4護衛隊にDDHグループ旗艦として配備され た。ちなみに本級の建造費は中期防決定時では2隻で1,900億円だったが、結局 「ひゅうが」が 1,057億円で、「いせ」が975億円で2隻あわせて2,032億円だった。その内訳は「ひゅうが」で、船体が472億円、主機が64億円と 、「いせ」で船体が447億円、主機が41億円となっている。本級は軽空母に発展する可能性を秘めているためその将来が注目されているものの、実際に今後どうなるかは不明だが、いずれにしろ高い航空機運用能力と指揮能力を持つ本級は今後30年以上、 護衛隊群旗艦としてだけでなくさまざまな任務で活躍することが期待されている。
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